副業に興味を持つ人が年々増えています。経済の先行き不透明感や物価高騰の影響、さらには働き方改革やテレワークの浸透もあって、「収入を増やしたい」「スキルを活かしたい」と副業を始める人は少なくありません。
しかし、副業は思いつきで始めてしまうと「思ったより稼げない」「本業に支障が出る」「確定申告が面倒」といった落とし穴にはまることも。そこで今回は、副業を始める前に必ず確認しておくべき5つのポイントを詳しく解説します。
1. 会社の就業規則や契約内容を確認しよう
副業を始める前に最も重要なのが「会社の就業規則の確認」です。副業が自由化されたとはいえ、すべての企業が副業を認めているわけではありません。
副業が禁止されているケースもある
副業解禁の流れが広がり、政府も後押しする形で「働き方の多様化」が進んでいる一方で、すべての企業が副業を自由に認めているわけではありません。実際には、今でも多くの企業が何らかの形で副業を制限しており、その背景にはいくつかの理由があります。
まず、企業側が最も懸念しているのが、本業に対する影響です。たとえば、副業に時間や体力を取られ過ぎてしまい、本業のパフォーマンスが低下したり、勤務中に副業に関する連絡を取っていることが発覚したりすると、勤務態度や職務専念義務に反するという理由で問題視される可能性があります。特に夜間の副業で睡眠時間が削られ、日中の業務に支障をきたすケースなどは、企業側としても見過ごせないリスクとなります。
また、情報漏洩のリスクも副業制限の大きな要因です。特にIT企業やメーカー、広告代理店、金融機関など、企業秘密や顧客データを扱う業種では、副業を通じて機密情報が外部に漏れるリスクがあるため、就業規則において厳しく副業を禁止している場合があります。仮に本人に悪意がなくても、うっかり情報を流出させてしまうことで企業イメージを損ないかねないため、会社としては未然に防止したいという思惑があります。
さらに、競合企業での業務や類似サービスの展開といった“競業”に該当する副業は、特に問題視されやすいです。本業と同じ業界で個人事業を始めたり、同様のサービスを展開したりする場合、企業の利益を脅かす存在とみなされ、契約違反とされる可能性もあります。たとえば営業職の社員が自分の取引先に個人的に別サービスを売り込むような行為は、企業にとっては重大な信用問題につながるおそれがあります。
さらに、公務員や一部の団体職員については、法律や公的規定により副業が原則として禁止されています。たとえば国家公務員法や地方公務員法では、職務の公正性や中立性を守るために、許可のない副業を行うこと自体が処罰の対象となります。一部では公益性のある活動や講演、執筆などは許可されることもありますが、多くの場合は制限付きであり、自由な副業とはいえません。
このように、副業は誰でも自由に始められるものではなく、所属する組織の就業規則や業界特性、職務内容によって制限が設けられていることがあるのです。副業を始める前には、会社の就業規則や雇用契約書、労働条件通知書などをよく読み込み、自分が副業をしても問題ない立場であるかどうかをしっかりと確認することが何よりも大切です。違反すれば、懲戒処分や減給といったペナルティを受ける可能性もあるため、軽い気持ちで始めるのではなく、まずは「会社にバレたら困るような副業はやらない」ことを基本に考えましょう。
▶ポイント:
本業を守ることが副業継続のカギ。副業を始める前に、必ず自社のルールを確認しましょう。
2. 税金と確定申告の知識を身につけよう
副業で収入が発生すると、避けて通れないのが「税金」と「確定申告」です。
● 副業収入が20万円を超えると申告が必要
副業を始める際に見落としがちなのが、「税金」と「確定申告」の問題です。特に注意が必要なのが、いわゆる“20万円ルール”と呼ばれる制度です。これは、副業で得た所得(収入から必要経費を差し引いた金額)が年間20万円を超える場合、確定申告をしなければならないというルールを指します。
この「20万円ルール」は、会社員など給与所得者が副業を行う際の一つの基準となっています。例えば、本業の会社から給与を受け取りつつ、休日や夜間にWebライティングやデザイン、フリマアプリ販売などで副収入を得ているケースが該当します。ここで注意すべきなのは、「収入が20万円」ではなく、「所得が20万円」を超えたかどうかが申告義務の判断基準となる点です。
たとえば、副業で30万円の売上があったとしても、その副業にかかった必要経費(材料費や通信費、交通費など)が15万円だった場合、所得は15万円となるため、確定申告の義務は発生しません。逆に、売上が21万円で経費が1万円しかかからなかった場合、所得は20万円となり、申告の対象になります。
このルールは、あくまで「給与所得者」に対する特例的な扱いであり、自営業やフリーランスとしての本業に加えて別収入がある人は、所得の金額にかかわらず確定申告が必要になります。また、医療費控除やふるさと納税の寄附金控除を受けるために確定申告を行う場合、副業の所得が20万円以下であっても、その金額を含めて申告しなければならない点にも注意が必要です。
なお、申告をしなかったからといってすぐにバレるとは限りませんが、税務署はマイナンバーや各種決済情報、取引履歴などから個人の所得を把握する手段を持っています。仮に無申告が発覚した場合には、延滞税や過少申告加算税、重加算税などのペナルティが科される可能性があり、結果的に高くつくことになります。
このように、副業で年間20万円を超える所得が発生する見込みがある場合は、必ず確定申告を行う準備をしておきましょう。帳簿をつけて経費を管理し、収支を明確にしておくことが、トラブル回避のための第一歩です。副業を始めるなら、収入を得ることと同じくらい、税金の知識も身につけておくべきなのです。
● 住民税が増えると会社にバレる可能性も
副業分の所得税は確定申告で処理できますが、住民税は会社の給与に合算されて課税されるため、金額が大きくなると会社に副業がバレる可能性も。これを防ぐためには「住民税を自分で納付する」にチェックを入れるのがポイントです。
● 経費の扱いや青色申告にも注目
副業が事業的な形態で継続する場合は、「青色申告」を活用すると節税効果が高まります。また、必要経費としてパソコン代や通信費を計上できるケースもあります。
▶ポイント:
副業を始める前に税金の基本知識を押さえておくことで、後々のトラブルを防げます。
3. 時間管理の見通しを立てよう
副業を始めるうえで、収入の目標や仕事内容に目が行きがちですが、実はもっとも重要で見落とされやすいのが「時間管理」です。多くの人が副業を挫折してしまう理由の一つが、想像以上に時間が取れず、継続できなくなるという点にあります。本業や家事、育児、通勤、プライベートなど、すでに日常生活で時間が埋まっている中で、さらに副業を加えるのは決して簡単なことではありません。
まずは、自分が1日・1週間でどれだけ自由に使える時間があるのかを客観的に把握することが必要です。仕事終わりの夜や、土日の空き時間、通勤中など、細切れのスキマ時間でも副業に充てられる時間は意外とあるかもしれません。そこで、スマートフォンのスケジュールアプリや、紙の手帳を使って日々の活動を“見える化”してみましょう。1日単位での時間の流れを分析することで、どの時間帯なら無理なく副業に取り組めるかの見通しが立てやすくなります。
副業の内容によっても、必要な時間の量や集中力の程度は異なります。例えば、ブログや動画編集などのクリエイティブ系副業はある程度まとまった時間と集中力が必要になるため、週末に数時間まとまった時間を確保する必要があるかもしれません。一方で、ポイントサイトや簡単なアンケートモニター、フリマアプリでの出品作業などは、通勤中やちょっとした休憩時間でもこなせるため、スキマ時間の活用に適しています。自分の生活スタイルと副業の特性がうまく噛み合えば、無理なく継続できるでしょう。
▶ポイント:
副業を継続するには「生活の中で無理なく取り組める時間帯を見つけること」がカギです。
4. 目的を明確にし、副業の種類を選ぼう
副業にはさまざまな種類があります。ブログ運営、ネットショップ、動画編集、せどり、配達副業、クラウドソーシングなど、選択肢は無数。大切なのは「目的に合った副業を選ぶこと」です。
● 目的別におすすめの副業は違う
- お小遣いを増やしたい → アンケートモニター、ポイントサイト、フリマ販売
- スキルを活かしたい → Webライター、デザイン、プログラミング
- 将来的に独立したい → ブログ運営、動画配信、オンライン講師

● 初期投資やリスクの有無も確認
在庫を抱える副業や、資格が必要な副業などは、始める前にしっかりと調査が必要です。できれば初期投資ゼロで始められるものからスタートするのが無難です。
● 自分の強みや興味も活かす
長く続けるには「興味がある」「やっていて苦にならない」ことが重要です。副業診断ツールなども活用して、自分に合う副業を探してみましょう。
▶ポイント:
副業選びは「収入」「時間」「リスク」「やりがい」など複数の視点から総合的に判断しましょう。
5. 情報収集と実行プランの策定
最後に、副業は「情報収集と継続的な学び」が成功の分かれ道です。
● 副業関連のブログ・YouTube・書籍を活用
実際に副業で成功している人の体験談やノウハウを知ることで、効率的な取り組み方がわかります。情報のアップデートも欠かさずに行いましょう。
● 詐欺や怪しい副業に注意
「絶対に稼げる」「スマホを触るだけで月収50万円」などの謳い文句は要注意。信頼できるプラットフォーム(例:クラウドワークス、ココナラ、メルカリなど)を通じて仕事を受けるようにしましょう。

● 目標を立てて行動計画を作成
漠然と「稼ぎたい」ではなく、「3カ月で月1万円」「半年後にスキルアップ」など、具体的な目標を設定することで、行動に一貫性が生まれます。
▶ポイント:
副業を成功させるには「学ぶ」「試す」「改善する」のPDCAサイクルを回す意識が不可欠です。
まとめ|準備こそ副業成功のカギ
副業は、収入アップのチャンスであると同時に、リスク管理や自己管理も問われる活動です。
今回ご紹介した5つのチェックポイントを事前に押さえておけば、副業での失敗を防ぎ、着実なステップアップにつなげることができるでしょう。
【副業前に確認すべき5つのこと まとめ】
- 会社の就業規則を確認する
- 税金や確定申告の仕組みを理解する
- 時間配分を計画する
- 自分の目的に合った副業を選ぶ
- 情報収集と実行計画を怠らない
副業は「始め方」で大きく結果が変わります。しっかり準備して、あなたに合った副業ライフをスタートさせましょう。
【免責事項】
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